大日本帝国
データベース

統計資料に
関しての前書き




日本人

生活
食料
衣服
その他


国家
産業
インフラ
貿易
財政・GDP


物資
石油
輸送
その他


軍備
航空戦力
海軍
陸軍



植民地








統計資料に関して前書き





 戦前および戦時中の日本の経済的発展の様相を正確に示す経済統計を収集し、校合することは合衆国戦略爆撃調査団の主要課題の一つであった。この仕事は想像される以上にずっと困難な仕事だった。日本の経済統計は範囲の点でも質の点でもはなはだしく不満足な状態にあり、十分信頼しがたい材料を基礎としている日本の諸統計は矛盾だらけで、また基本的情報の収集方法にもはなはだ欠陥が多い。
 統計的情報の全領域に渡って責任を持つところの単一機関というものは日本にはない。そこで日本の戦争経済における最も重要な事件を相当の正確さで書ける一組の数字を得ようとすれば、いちいち政府の部局や各産業の統制機関に照会し、また個別会社の記録を参照しなければならなかった。企画院、内閣統計局、軍需省総動員局などは政府の企画のために必要な資料を確保しようとあらゆる努力をしたが、その努力はおおむね失敗に帰していた。
 従って、本調査団が使っている諸統計は出発点から築き上げねばならなかった。これらはこの分野において日本人自身がやり終えたところよりも、かなりの進歩をみせている。本書に採録した諸統計表は、最近の十年における日本の経済的発展に最も関連のあるものに限られていて、特殊分野における時系列については本調査団の各部の報告書にあるからそれを参照されたい。これらの諸統計は日本の経済問題研究者にとって必ずや有益なるべきを信じる。

USSBS米国戦略爆撃調査団報告書より






 われわれにとって、動かすことが出来ないものに、まず単純な「数字」がある。たとえば、十七個師団という数、その中に含まれる火器の数と火力の合計、それらの総計としての全師団の総軍事力という「数字」は、主義主張によって変化するわけではない。ましてある「数」の実数を軍国主義者が計算しようと平和主義者が計算しようと「数」は「数」であり、もし、両者の間に差が出るなら、どこで誤差を生じたか厳密につきあわせれば、それも解明できるはずである。
 従って、それを行わずに、その数を多く見れば何主義者、少なく見れば何主義者といった分類を行う者がいれば、それは実にこっけいな存在といわねばならない。まして、その実数を無視して、この数をある数量と見ない者には何らかの資格がない、といった発言は、こっけいを通りこして馬鹿げている。

山本七平 「日本はなぜ敗れるのか」より